怪談– tag –
-
鏡の奥にいたのは
私が大学2年の頃、祖母が亡くなった。 法要のため、実家に帰省した私は、祖母が生前暮らしていた部屋に泊まることになった。その部屋は、昔から少しだけ苦手だった。特に、壁に掛けられた大きな鏡が怖くて、子どもの頃は目を合わせられなかった。 けれど大... -
あの部屋には入らないで
私たち家族がその家に引っ越してきたのは、春の終わりだった。夫の転勤先に近く、築年数の割に妙に安い家賃に惹かれて契約を決めた。 古い一軒家で、六畳三間の和室が続く作り。少しカビ臭かったけれど、掃除すればなんとかなると思った。ただ、二階の一番... -
最後の乗客
タクシー運転手をやっていると、不思議なことにたまに遭遇する。この仕事を始めて20年になるが、今でも忘れられない夜がある。 その日は土曜の深夜2時を回ったころだった。 繁華街での客足も落ち着き、車内でラジオを流しながらひと息ついていたとき、バッ... -
見上げている窓
学生時代、私は東京郊外の古いアパートに住んでいた。築30年以上の2階建てで、私の部屋は1階の一番奥、日当たりの悪い角部屋だった。 隣室もほとんど空き部屋で、全体的に寂れた雰囲気があった。けれど家賃が格安だったため、特に気にせず住んでいた。 あ... -
赤い傘の女
当時、私は郊外の営業所で働いていた。朝は早く、夜は遅い。帰りが終電近くになることもしばしばだった。 ある雨の夜のこと。会社を出たときには土砂降りになっていて、傘を持っていなかった私は最寄りのコンビニでビニール傘を買った。 駅までの道を歩い... -
踏切の向こう
私の地元には、昔から“出る”と噂される踏切がある。最寄駅から住宅街へ続く一本道にぽつんとある、遮断機のない小さな踏切だ。 電車は単線で、日中でも通る本数は少ない。だがその場所では、何度も人身事故が起きていて、地元では「夜は通るな」と言われて... -
井戸の声
祖父が亡くなったのは、私が中学2年の夏だった。葬式が終わったあと、祖母が一人で住んでいる山奥の家に、両親と一緒に手伝いに行った。 その家には、昔から使われていない古い井戸がある。 庭の片隅にぽつんと佇む井戸。木の蓋がされていて、苔がびっしり... -
隙間の声
そのアパートに引っ越してきたのは、去年の春だった。 築年数は古かったが、家賃が破格で駅からも近い。多少の古さは目をつぶっても十分な条件だった。 部屋は2階建てアパートの2階、端の角部屋。見取り図を見ると、隣の部屋とは一部の壁でしか接しておら... -
誰も知らない階段
私の通っていた高校には、妙な噂があった。校舎裏の体育館とプールの間に、誰も使っていない小さな非常階段があるのだが、「絶対に昇ってはいけない」と言われていた。なぜかと言えば、その階段を昇ると、誰もいないはずの場所に人影が見えるからだという... -
開かずの仏間
私の祖父母の家には、子供の頃から「絶対に開けてはいけない部屋」があった。それは仏間と呼ばれる和室で、仏壇が祀られていたが、私が物心ついた頃には既に鍵がかかっており、家族の誰もその部屋には近づかなかった。 「なんで開けちゃいけないの?」と聞... -
夜だけ歩く廃校舎
地元で有名な“出る”と噂の廃校がある。小高い山の上にぽつんと建つ旧中学校で、十数年前に統廃合で閉鎖されて以来、誰も使っていない。 昔は肝試しスポットとして人気だったが、ある年を境に誰も近づかなくなった。 理由は、**“夜だけ校舎の明かりがつく”*... -
窓の向こうの教室
大学時代、教育実習で訪れたある田舎の中学校。築50年は経っているという古びた校舎は、どこか空気が重たかった。 担当になったのは2年生のクラス。明るい子が多く、授業も順調に進んでいた。だが、ある日、女生徒の一人から奇妙なことを聞いた。 「先生、...