返ってきたメッセージ

大学時代の友人、ミナとは卒業後もよく連絡を取り合っていた。
 お互い忙しい身だったが、週に一度くらいはLINEで他愛のない話をやりとりしていた。

 ある日、私はいつものように「元気?」と送った。
 すると、すぐに「元気だよ。あんたは?」と返ってきた。

 その返信に、私は一瞬手が止まった。

 ──おかしい。
 ミナは、一週間前に亡くなっているのだ。

 ニュースでその訃報を知った時、私は涙が止まらなかった。
 通勤途中に起きた交通事故。あっけなさすぎて、まだ信じられないままだった。

 葬儀にも行った。
 ミナのお母さんに、「仲の良い友達だったのね」と声をかけられた。
 あの骨壺が、もうこの世にいないという証拠だというのに……。

 そんな彼女から、今日メッセージが届いたのだ。

 「元気だよ。あんたは?」

 私はすぐに既読を確認した。たしかに、彼女のアカウントからだ。
 いたずらか? でも彼女のスマホは家族が処分したと聞いている。

 混乱しながらも、「誰なの?」と送り返したが、それ以降返事はなかった。

 その夜、大学時代の共通の友人であるユウタに相談した。

 「ミナのLINE、まだ使われてるみたいなんだけど……」

 すると彼は驚いたようにこう言った。

 「え、それ、先週も別の友達が同じこと言ってたよ。ミナのアカウントから返事が来たって。」

 私はゾッとした。
 何が起きてるのか分からない。いたずらにしても悪質すぎる。

 翌日、ミナの実家に電話をかけてみた。
 応対してくれたのは彼女のお母さんだった。

 「……あの、ミナさんのスマホって、まだ……」

 お母さんはしばらく黙ったあと、小さくこう言った。

 「……あの子のスマホね、事故で……壊れちゃって……中身がバラバラで、何も残ってないの。LINEも……消えたと思うけど……」

 私はその言葉を聞いて、ますます混乱した。

 スマホは壊れ、アカウントも使えないはず。
 でも、あのメッセージは……たしかに「既読」になっていた。

 ──そしてその夜、もう一度LINEが届いた。

 「そっちに、行ってもいい?」

 私は思わず、スマホを床に落とした。


解説

この話の怖さの本質は以下にあります:

  • ミナはすでに死亡しており、スマホも壊れて使えない。
  • それにもかかわらず、ミナのアカウントから既読付きの返信が来ている
  • つまり、現実では使われていないはずのアカウントが、何か別の力で動いている
  • 最後の「そっちに、行ってもいい?」という一文が意味するのは、死後の世界に“迎えに行く”意思かもしれません。

「意味がわかると怖い」のは、誰かがふざけているわけではなく、亡くなった本人が連絡してきているという点です。

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