大学進学を機に、念願の一人暮らしを始めた。
古いけど広めのワンルームで、家賃も安い。何より「完全に一人になれる」ことが何よりの魅力だった。
最初のうちは少し寂しさもあったけど、慣れてくるとむしろ快適。
誰にも気を使わず、夜中まで動画を観たり、ジャンクフードを食べたり、好き放題だった。
そんなある日、実家の母から荷物が届いた。
食料や日用品の詰め合わせと一緒に、手紙が入っていた。
「一人暮らし、大丈夫そうね。
でも、ちゃんとカーテンは閉めるのよ。
毎日あの部屋の窓が開いてるのが見えるって、ご近所の方が心配して電話をくれたのよ?」
……?
少し不思議に思いながらも、「昼間開けっぱなしにしてたのかな」と納得して手紙をしまった。
それから数日後。
夜中にふと目を覚ました。
何かの気配を感じて、ベッドから起き上がり、部屋の中を見渡す。
誰もいない。音もしない。ただ、窓のカーテンが少しだけ揺れていた。
「風かな……?」
そう思いながら、念のため部屋中を見て回ったが、何も異常はなかった。
だけど、その翌朝、ポストに一枚の紙が入っていた。
手書きで、こう書かれていた。
「部屋で暴れたり騒いだりしないでください。
壁が薄いので、あの人と喧嘩する声がよく響いてます」
……私は、一人暮らしのはずなのに。
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