大丈夫、鍵はかけた

一人暮らしを始めてからというもの、私は戸締まりにはとても気をつけている。
特に夜寝る前には、玄関の鍵を二重にチェックするのが習慣だ。

そんなある晩、寝ようとしていた時、スマホにメッセージが届いた。
「今日ってさ、鍵ちゃんとかけたよね?」
送信者は友人のユリ。彼女とはよくLINEで日常のやり取りをしている。

「うん、かけたよ。毎晩してるし」
そう返すと、すぐに既読がついた。

少し間をおいてから、ユリから返信が来た。
「そっか、よかった。じゃあ安心だね」
なんとなく引っかかったが、深く考えずにそのまま眠りについた。

翌朝、起きてリビングに行くと、部屋の様子が微妙に違っていた。

テーブルの上に置いていたはずのリモコンが床に落ちていたり、カーテンの隙間が広がっていたり。
気のせいかとも思ったが、なんとなく不安でユリに再度連絡してみた。

「昨日のLINEさ、なんで急に“鍵かけた?”って聞いてきたの?」

すると彼女から返ってきたのは、こうだった。

「え? 私そんなの送ってないよ?」

──え?

念のため、履歴を確認した。
確かにやり取りは残っている。ユリの名前で送られてきたメッセージ、そして私の返信。

でも、よく見ると何かがおかしい。
表示された送信者名の下にあるIDが、ユリの本物のアカウントと微妙に違っている

アイコンも名前も同じ。でも、よく見ると違う。

私はすぐにドアの鍵を確認した。

……閉まっていなかった。

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