怪談– category –
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白衣の診療所
ある山奥に、すでに使われなくなった診療所がある。地元では有名な肝試しスポットで、「白衣の医者が今も出る」と噂されていた。 大学時代、夏休みに友人4人とその診療所を訪れた。時刻は夜の11時を過ぎていたが、あえて暗い時間を狙って来たのだ。 入り口... -
二度鳴るチャイム
会社からの帰宅が遅くなった平日の深夜、時刻は0時を過ぎていた。駅から自宅までは歩いて10分ほどだが、人通りもなく、あたりは静まり返っていた。 マンションのエントランスをくぐり、自室のある3階へと階段を上る。オートロックを解除してから玄関の鍵を... -
帰れなかった集落
大学時代の夏休み、俺は民俗学を専攻している友人・宮坂の調査に付き合って、小さな山村を訪れた。 その村は地図にもろくに載っておらず、バスは1日に2本しか来ない。宿も民宿が1軒あるだけで、あとは年季の入った木造家屋が並んでいる。 村の人たちは親切... -
カンカン石
祖母の住んでいた田舎の家には、変わった風習があった。 その家の裏には、小さな祠と丸い石がひとつだけ置かれていて、近所の人たちはそれを「カンカン石」と呼んでいた。 昔からこの村では、「カンカン石に触れてはいけない」という決まりがあった。理由... -
203号室からの声
大学生の頃、2階建ての古いアパートに住んでいた。俺の部屋は201号室で、隣の203号室は半年以上ずっと空室だった。 管理会社が言うには、前の住人が夜逃げ同然で出て行ったとか。気味が悪かったが、家賃が安かったし、特に気にはしていなかった。 だが、あ... -
空き教室のノート
ある田舎の中学校での出来事だ。俺の通っていた学校には、使われていない旧校舎があった。窓には板が打ちつけられ、教室のドアにも鍵がかけられている。だが、生徒の間ではこう噂されていた。 「3階の奥の教室には、勝手に増える“ノート”があるらしい」 俺... -
ベランダの向こうの顔
引っ越してきたばかりのマンションで、奇妙なことが起き始めたのは、5日目の夜だった。 東京郊外の新築物件。1LDKでオートロック、防音も完璧、築浅で家賃も安い。「これは掘り出し物だ」と思った俺は即決で契約した。初日は静かすぎて逆に落ち着かないほ... -
あいさつの家
その家は、挨拶をすると返してくれる家だった。 会社の後輩・仁志が新築の一軒家を購入したということで、週末に遊びに行った。郊外の住宅街にあり、周囲も静かで落ち着いた雰囲気だった。 仁志は「いい土地が手に入った」と嬉しそうに話していた。そして... -
寝言の録音
社会人になってから一人暮らしを始めた俺は、不眠気味になった。 仕事のストレスもあるだろうが、夜中に何度も目が覚める。目覚めるたびに胸がざわざわして、冷や汗をかいている。夢も覚えていない。ただ、ものすごく疲れているのだ。 そんなとき、ネット... -
最後の通話
大学時代の同級生・村上が突然事故で亡くなった。飲酒運転の車にはねられ、その場で即死だったという。通夜に参加した夜、帰宅した私は村上との思い出に浸りながら、彼の名前が登録されたスマートフォンの連絡先を眺めていた。 そのとき——突然、スマホが鳴... -
深夜のエレベーター
友人の佐々木が一人暮らしを始めたのは、築年数の古い10階建てのマンションだった。家賃が安い代わりに、エレベーターは古く、ボタンを押してもすぐに来ないことが多かったという。 ある晩、深夜0時を回った頃、仕事帰りの佐々木がマンションに戻ると、1階... -
空室のはずの部屋
会社の同僚・田島が引っ越したマンションには、ちょっとした曰くがあった。「隣の部屋、ずっと空室なんだってさ」田島がそう言っていたのは、入居してすぐのことだった。駅近で家賃も手頃なその物件。空室があるのは少し不自然にも感じたが、特に気にする...