ヒトコワ– category –
ヒトコワとは、幽霊よりも人間の怖さを描いた実話ベースの怖い話ジャンルです。身近に起こりそうな恐怖や、ゾッとする人間の心理がテーマになっています。
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扉の向こうの男
社会人1年目の夏、俺は安アパートで一人暮らしをしていた。築40年を超える木造のアパートで、2階建ての4世帯。風呂もなく、トイレは共同。 家賃は安いが、天井や床が薄く、隣の生活音が筒抜けだった。 ある晩のこと。深夜2時を回っても眠れず、スマホを眺... -
シェアハウスの地図
大学を卒業したばかりの春、俺は東京で就職が決まり、都内の格安シェアハウスに住むことになった。築古の一軒家をリノベーションした物件で、全部で5人の住人がいた。 家賃は安く、個室もあり、共有スペースにはキッチンとシャワーがあった。住人同士の交... -
監視アプリ
大学2年の春、彼女と同棲を始めた。1Kの狭い部屋だったが、ふたりで暮らせるだけで楽しくて仕方がなかった。 彼女は少し嫉妬深い性格で、「浮気だけは絶対に許さないからね」とよく言っていた。そんな冗談めかした脅しも、最初のうちは可愛いと思っていた... -
赤いランドセル
当時、俺は地方の新聞社に勤めていた。取材のためにある田舎町を訪れたのは、梅雨の真っ只中だった。 駅から車で20分ほどの小さな集落。目当ては、地元で語られる「迷子神社」という場所に関する地域伝承だった。 神社は山の中腹にひっそりと建っており、... -
住人のいない隣室
都内の小さなアパートに引っ越して半年になる。会社からも近く、家賃も安くて、ひとり暮らしには十分な部屋だった。 だが、ひとつだけ不思議なことがある。隣の部屋から、毎晩「音」がするのだ。 それは決まって深夜1時過ぎ。壁越しに「カタカタ」「ギィィ... -
知らない番号の男
大学1年の頃、スマホに突然、見覚えのない番号から着信があった。非通知ではなく、市内局番だったので「誰かの間違いかな」と思い、無視した。 だが、次の日も同じ番号から電話が来た。試しに出てみると、無言のまま数秒が経ち、最後にひとことだけ聞こえ... -
隣人のメモ
社会人1年目、会社の近くにある築浅のマンションに引っ越した。オートロック、宅配ボックス付き、駅から徒歩5分。文句なしの物件だった。 唯一の気がかりは、隣人の存在だった。一度も顔を見たことがなかったのだ。 毎朝出勤時、ポストの前で会いそうにな... -
最上階の影
私は数年前、深夜帯の清掃アルバイトをしていた。場所は都心にある24時間営業のオフィスビル。担当時間は深夜1時から4時。人がいない時間帯に、各階の廊下やトイレ、給湯室を清掃する仕事だった。 そのビルは地上10階建てで、私の担当は1階から3階まで。最... -
駅前の女
大学へ通う通学路の途中、駅前の交差点の角に、毎朝立っている女性がいた。 年齢は30代前半くらい。黒いスーツ姿で、手には何も持たず、ただ一点を見つめて立っている。表情は硬く、笑うこともなく、毎朝まったく同じ姿勢で、同じ場所にいた。 最初は「出... -
見つけたのは、どっち?
高校の帰り道、ふと気まぐれでいつもとは違う道を通ってみた。住宅街の中にある細い裏路地。人通りは少なく、街灯もまばらで、静かすぎるほどだった。 角を曲がったとき、道の先に誰かが立っているのが見えた。中年の男だった。ボサボサの髪、よれたスーツ... -
録画に映った男
一人暮らしを始めて半年が経った頃、妙な出来事が起こり始めた。 最初は、深夜2時ちょうどにインターホンが鳴るだけだった。モニターを確認しても、誰も映っていない。風の音か、通りすがりの誰かが間違えて押したのかもしれないと思い、その日は特に気に... -
背後の足音
夜11時過ぎ、仕事帰りにコンビニへ立ち寄った。買い物を済ませて家へ向かう途中、普段よりも少し近道をしようと、駅裏の細い商店街を抜ける路地を選んだ。 周囲には人影もなく、静まり返っていた。途中、背後からコツ……コツ……と、誰かの足音が聞こえてきた...