投稿一覧
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あの部屋のカーテン
大学の近くで一人暮らしを始めたとき、住んでいたアパートの隣の部屋には、ずっと誰も入っていなかった。 古びた外観で、建物全体にうっすらと湿気の匂いが染みついていたが、家賃は破格で、駅にも近い。それなりに満足していた。 だが、ひとつだけ気にな... -
赤いリボンの女の子
僕の家の近くには、小さな神社がある。町外れにぽつんと立っていて、昼間でも少し薄暗く、子どもたちにはあまり人気がない場所だった。 けれど、僕はなぜかそこが好きで、小学校からの帰り道によく立ち寄っていた。 神社の脇には大きな木があって、その根... -
隣人のノック
大学進学を機に、私は小さなワンルームマンションに引っ越した。古びた建物だったが、駅から近く、家賃も安かった。 最初の一ヶ月は特に問題もなく、快適に暮らしていた。 だが、引っ越してからちょうど一ヶ月が経った頃だった。夜、就寝前にふと「コンコ... -
隙間の声
そのアパートに引っ越してきたのは、去年の春だった。 築年数は古かったが、家賃が破格で駅からも近い。多少の古さは目をつぶっても十分な条件だった。 部屋は2階建てアパートの2階、端の角部屋。見取り図を見ると、隣の部屋とは一部の壁でしか接しておら... -
兄ちゃんがくれたもの
僕には二つ年上の兄がいる。小さい頃からずっと仲が良くて、どこに行くにも一緒だった。 ただ、兄ちゃんは少し変わった子だった。外で遊ぶのが苦手で、友達ともあまり話さず、僕とだけよく喋った。それでも僕は、兄ちゃんのことが大好きだった。 ある日、... -
ずっと見ていた
私はずっと一人暮らしをしている。自宅はオートロック付きのマンションで、セキュリティには自信がある。職場も近く、生活の不便もなかった。 ただ、ここ最近、妙な違和感を覚えることが増えてきた。特に夜。帰宅して玄関を開けた瞬間、誰かの気配を感じる... -
見送りの家
山奥の小さな村に、「見送りの家」と呼ばれる古民家がある。正式な住所は残っておらず、地図にも載っていないが、地元の人々の間では有名だった。 「入った者は、見送られるまで出られない」――そう言われていた。 私は都市伝説を追うライターとして、その... -
赤いランドセル
ある郊外の住宅地での話。私はカメラ好きの男で、休日にはよく近所の公園や街角でスナップ写真を撮っていた。 その日も天気が良かったので、古い商店街の裏路地を歩いていた。細い道の先に、誰もいないはずの空き地が見えた。でもその奥に、小さな女の子が... -
隣人は誰にも見えない
都内で一人暮らしを始めて3ヶ月目。築浅・セキュリティ完備・駅近という条件にしては、家賃が少し安いなとは思ったが、特に気にせず住んでいた。 ある日、エレベーターで同じ階の住人とすれ違った。中年の女性で、どこか無表情でうつろな目をしていた。「... -
その部屋は誰も入れない
大学進学を機に、地方都市の築年数の古いアパートへと引っ越した。家賃が格安で、駅も近く、条件としては申し分なかった。ただ一点、気になる点があった。 それは、部屋番号が「201号室」だったにもかかわらず、建物には「202号室」がなかったことだ。大家... -
閉店後のコンビニ
大学生の頃、夜勤のバイトでコンビニに勤めていた。場所は郊外の住宅街にある小さな店舗。夜間の客は少なく、深夜2時を過ぎればほとんど来ない。 バイト仲間は同い年の斉藤という男で、二人で交代しながら勤務していた。基本はワンオペだけど、深夜の2時か... -
シェアハウスの暗黙のルール
数年前、上京して最初に住んだのは、都内の格安シェアハウスだった。6畳の個室にキッチン・風呂・トイレ共同という、よくあるタイプ。築年数は古かったが家賃が安く、何より駅近だったので即決した。 入居当日、出迎えてくれたのは30代くらいの女性・Aさん...