投稿一覧
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踏切の向こう
私の地元には、昔から“出る”と噂される踏切がある。最寄駅から住宅街へ続く一本道にぽつんとある、遮断機のない小さな踏切だ。 電車は単線で、日中でも通る本数は少ない。だがその場所では、何度も人身事故が起きていて、地元では「夜は通るな」と言われて... -
つながった通話
大学時代の友人に、妙な男がいた。 斉藤という男で、特別変わったところはないのだが、「通話が苦手」だと常に言っていた。LINEのやり取りは普通にするし、会えばよく喋る。けれど、電話になると絶対に出ない。こちらからかけても折り返してこないし、「用... -
見守りカメラ
高齢の祖母が一人暮らしをしていた。最近足腰が弱くなってきたこともあり、家族の提案で「見守りカメラ」を設置することになった。 居間の隅に小さなカメラを設置し、スマホでリアルタイム映像を確認できるようにした。通知設定をオンにすれば、「動きがあ... -
赤い傘の女
当時、私は郊外の営業所で働いていた。朝は早く、夜は遅い。帰りが終電近くになることもしばしばだった。 ある雨の夜のこと。会社を出たときには土砂降りになっていて、傘を持っていなかった私は最寄りのコンビニでビニール傘を買った。 駅までの道を歩い... -
家にいるの、誰?
大学の夏休み、久しぶりに実家に帰った。両親は旅行中で、家には俺ひとり。高校まで過ごした懐かしい部屋で、のんびりする時間は悪くなかった。 2日目の夜。シャワーを浴びたあと、リビングでジュースを飲んでいると、2階からドタドタと足音が聞こえた。 ... -
上の階の足音
一人暮らしを始めて半年ほどが経った頃の話だ。都内の築浅マンションで、セキュリティもオートロックもしっかりしていて、特に不満もなく暮らしていた。 ただ、少しだけ気になることがあった。夜になると、上の階から足音が聞こえるのだ。 ドタドタと歩く... -
白い手すり
大学時代の春休み、友人3人と一緒に、郊外の古い旅館へ泊まりに行ったことがある。温泉付きで格安ということで選んだのだが、現地に着いたとき、私は少しだけ後悔した。 旅館は山の中腹にあり、かなり年季が入っていた。建物の外壁はくすんでひび割れてお... -
母からのLINE
大学進学で一人暮らしを始めてからというもの、実家の母とはよくLINEでやり取りをしている。母はスマホに詳しくないくせに、頑張ってスタンプを送ってきたり、写真を送ってきたりと、少し過保護気味なところもあるが、それもどこか微笑ましかった。 その日... -
となりの住人
アパートで一人暮らしを始めて、3ヶ月が経った頃だった。築年数は古いが、駅近で家賃も安く、最上階の角部屋ということで、静かに暮らせるのが気に入っていた。 ただ一つだけ、気になることがあった。隣の部屋に住む人の姿を、一度も見たことがないのだ。 ... -
最後のチャイム
私が通っていた中学校には、妙な噂があった。 ──夜の9時に、校舎のチャイムが鳴る。 もちろんそんな時間に授業はないし、校内には誰もいない。でも、確かにチャイムの音だけが響くという。 私は当時、その話を半信半疑で聞いていた。しかし、ある日、実際... -
鍵を開けたのは、私じゃない
都内の1Kマンションに引っ越してきたのは、仕事の都合だった。職場まで徒歩15分という立地に惹かれて決めた物件は、築20年だが小綺麗で、オートロックもついている。家賃も手頃で、特に問題はなかった。 最初の異変は、引っ越してから3日目の夜に起こった... -
お父さんの写真
小学4年生の娘がいる。名前は美咲(みさき)。少し人見知りだが、家では明るく、よく笑う子だ。 ある日、娘が小学校から帰ってくるなり、嬉しそうに話しかけてきた。 「ねえパパ、学校の図工で“家族の絵”を描いたんだよ!」 「へぇ、どんなの?」 「ママと...