投稿一覧
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四階の部屋
大学時代の友人・田村が、妙な物件に住んでいた。 築年数が浅く、見た目もきれいなのに家賃が相場よりずっと安いという。 「怪しいだろ?」と笑いながら案内されたそのアパートは、外観も内装も普通だった。 ただ、ひとつだけ奇妙なことがあった。 そ... -
ただいま
大学を卒業し、就職を機に実家を出て一人暮らしを始めて2年。 仕事にも少し慣れてきた頃、久しぶりに実家に帰ることにした。 両親に事前に連絡していたので、母は「楽しみにしてるよ」と電話で言っていた。 当日、最寄り駅からバスに乗り、実家の近く... -
となりの部屋の音
大学進学で一人暮らしを始めて数ヶ月が経った頃、アパートの「となりの部屋」から妙な物音がするようになった。 最初は、夜中に何かを落としたような“ゴンッ”という鈍い音だった。 古いアパートだし、物音が響くのはよくあることだと思っていた。 け... -
白い廊下の奥
大学を卒業してすぐ、就職先の都合で地方都市に引っ越した。 右も左もわからない土地で、慌ただしく新生活が始まった頃、不動産会社から紹介されたのが、少し古びたマンションの一室だった。 内装はリフォームされており、小綺麗で家賃も手頃だった。 ... -
赤いリボン
小学校の頃、僕には“ミカちゃん”という女の子の友達がいた。 ミカちゃんはいつも髪に赤いリボンをつけていて、明るくて、よく笑う子だった。 毎朝、僕とミカちゃんは一緒に登校していた。 でも、ミカちゃんは少し変わっていて、なぜか学校の手前50メー... -
見てた人
俺は普段、深夜まで働くことが多い。 ある日、終電で帰宅した俺は、駅から自宅までの15分ほどの道のりを、いつも通りイヤホンをしながら歩いていた。 住宅街に入り、何気なくイヤホンを外したとき、不意に誰かの気配を感じた。 背後ではない。前方の道... -
風の通り道
大学生の頃、僕は地方の古びたアパートで一人暮らしをしていた。 築40年近く、木造二階建て、家賃は格安だったが、隣室との壁が薄く、風の強い日は建物全体がギシギシと軋んだ。 2階の角部屋、201号室。そこが僕の部屋だった。 日当たりは悪くなかった... -
写真立ての向き
僕の部屋には、小さな木製の写真立てがひとつある。 中には、小学校の卒業式の日に撮った、家族全員の写真が収められている。 その写真は、父と母、僕と妹、そして祖母の五人が玄関先に立ち、にこやかに笑っているものだ。 今はもう亡くなった祖母の姿... -
見守りアプリ
最近の子どもはスマホを持つのが当たり前らしい。 娘の学校でも、位置情報が共有できる「見守りアプリ」の使用が推奨されていた。 心配性の僕と妻も、早速そのアプリを導入した。 学校への行き帰りはもちろん、塾や遊びに行った先でも、地図上で娘の居... -
川辺の電話ボックス
僕の地元には、今ではあまり見かけなくなった「電話ボックス」が、ひとつだけ残っている。 それは、町外れの川沿いの土手の近くにぽつんと建っていて、使われている様子もなく、手入れもされていない。 ガラスは少し曇っていて、内部は薄暗く、外から覗... -
毎朝の挨拶
僕が通っていた小学校は、地方の山間にあり、全校生徒で60人程度の小さな学校だった。 家から学校までは徒歩15分ほど。登校途中に通るT字路の角には、古い家が一軒だけ建っていた。 その家には、おばあさんが一人で住んでいて、毎朝、家の前を通る僕... -
見守る隣人
大学に進学して、一人暮らしを始めたのは昨年の春だった。 家賃を抑えたくて選んだのは、築30年近い古いワンルームアパート。駅から徒歩15分、最寄りのコンビニまでは坂道を下らないといけない立地だ。 ただ、内見のときに対応してくれた管理人さんが...