投稿一覧
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家族写真
彼女の実家に初めて挨拶に行った日のことだ。玄関をくぐると、廊下にずらりと家族写真が並んでいた。親戚や子供のころの写真もあり、温かい家庭なんだなと思った。 彼女の母親が出迎えてくれ、少し緊張しながらもリビングでお茶をご馳走になった。「うちの... -
余った写真
大学のゼミ仲間と旅行に行った。男3人、女2人の合計5人。卒業も近かったし、みんな予定を合わせて温泉地へ1泊2日の小旅行だ。 旅館でのんびり過ごし、帰りの電車を待っているときに、ひとりが「みんなで写真撮ろう!」と言い出した。スマホで何枚も写真を... -
鍵垢の彼女
彼女とはSNSで知り合った。共通の趣味があり、最初はDMで軽くやり取りをしていただけだったが、徐々に会話は毎日続くようになり、やがて通話をするようになった。 アイコンはイラスト、名前もハンドルネーム。リアルの情報はほとんど明かさない子だったが... -
忘れられない訪問者
大学時代、私は下宿で一人暮らしをしていた。ある日曜の昼下がり、インターホンが鳴った。 モニターを見ると、20代後半くらいの男が立っていた。「すみません、このあたりに○○さんという方、お住まいじゃないですか?」と人当たりのよさそうな笑顔で尋ねて... -
隣の部屋の住人
大学進学を機に、一人暮らしを始めたアパートは、古びた木造2階建て。家賃が安く、多少の生活音が響くのは覚悟のうえだった。 引っ越してしばらくして、気になることがあった。夜中、隣の部屋から「うっ、うっ……」と、抑えたようなすすり泣きが聞こえるこ... -
最後の通話
大学時代の同級生・村上が突然事故で亡くなった。飲酒運転の車にはねられ、その場で即死だったという。通夜に参加した夜、帰宅した私は村上との思い出に浸りながら、彼の名前が登録されたスマートフォンの連絡先を眺めていた。 そのとき——突然、スマホが鳴... -
深夜のエレベーター
友人の佐々木が一人暮らしを始めたのは、築年数の古い10階建てのマンションだった。家賃が安い代わりに、エレベーターは古く、ボタンを押してもすぐに来ないことが多かったという。 ある晩、深夜0時を回った頃、仕事帰りの佐々木がマンションに戻ると、1階... -
空室のはずの部屋
会社の同僚・田島が引っ越したマンションには、ちょっとした曰くがあった。「隣の部屋、ずっと空室なんだってさ」田島がそう言っていたのは、入居してすぐのことだった。駅近で家賃も手頃なその物件。空室があるのは少し不自然にも感じたが、特に気にする... -
おかえりって言ったよね?
会社からの帰りが少し遅くなったある晩、私はマンションのエントランスでエレベーターを待っていた。 深夜0時を過ぎた静まり返ったロビー。誰もいないはずなのに、後ろから「カツ……カツ……」と足音が近づいてくる。 なんとなく振り返れずにいると、耳元で「... -
となりの席の子
中学2年のとき、俺の隣の席には「倉田」という女の子がいた。 無口で、いつも下を向いている。誰とも話さず、教科書だけを静かに眺めていた。クラスでもあまり存在感はなかったけど、なぜか俺とはよく目が合った。 ある日、学校帰りに彼女から声をかけられ... -
母からの電話
俺が大学に入って一人暮らしを始めてから、母はやたらと電話をかけてくるようになった。 用もないのに「元気?」「ちゃんと食べてる?」と何度も連絡してくる。最初はありがたかったが、次第にそれが少し重く感じるようになっていった。 ある日、ゼミの帰... -
通学路の男
中学1年の夏頃のこと。俺が通っていた学校では、通学路に立って生徒に挨拶してくる中年の男がいた。 スーツ姿で、いつも同じ場所に立っている。朝になると「おはよう!」と笑顔で声をかけてくるので、俺も最初は軽く会釈していた。 そのうち、男は俺の名前...