投稿一覧
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隣人は空室のはずだった
僕が今住んでいるアパートは、築40年以上の古い建物だ。古びた外観に、薄暗い共用廊下。けれど駅から近く、家賃が相場よりもかなり安かったことが決め手だった。 入居当初から少し気になる点があった。それは、隣の201号室に郵便物が山のように溜まってい... -
白衣の診療所
ある山奥に、すでに使われなくなった診療所がある。地元では有名な肝試しスポットで、「白衣の医者が今も出る」と噂されていた。 大学時代、夏休みに友人4人とその診療所を訪れた。時刻は夜の11時を過ぎていたが、あえて暗い時間を狙って来たのだ。 入り口... -
もう一人のお兄ちゃん
僕の部屋の隣には、母子家庭の兄妹が住んでいた。兄は小学3年生くらいで、妹はまだ5歳ぐらい。いつも明るくて元気な声が聞こえてくる。母親は夜遅くまで働いているようで、子どもたちは夕方から夜まで二人きりのようだった。 僕の部屋と彼らの部屋は壁一枚... -
エレベーターで会った男
平日は残業が続き、毎晩終電ギリギリの帰宅が続いていた。その日も終電を乗り継ぎ、マンションに着いたのは深夜0時過ぎ。玄関ロビーには誰もおらず、ひっそりと静まり返っている。 カードキーでオートロックを解除し、エレベーターのボタンを押す。ドアが... -
二度鳴るチャイム
会社からの帰宅が遅くなった平日の深夜、時刻は0時を過ぎていた。駅から自宅までは歩いて10分ほどだが、人通りもなく、あたりは静まり返っていた。 マンションのエントランスをくぐり、自室のある3階へと階段を上る。オートロックを解除してから玄関の鍵を... -
田中さんは、もういない
派遣で入った職場で、最初に仲良くなったのが田中さんだった。40代後半の優しい女性で、なんでも丁寧に教えてくれた。 「ここの仕事、覚えちゃえば簡単よ。焦らずやれば大丈夫」 田中さんはベテランで、周囲からも頼られていた。 数ヶ月が経ったころ、急に... -
帰れなかった集落
大学時代の夏休み、俺は民俗学を専攻している友人・宮坂の調査に付き合って、小さな山村を訪れた。 その村は地図にもろくに載っておらず、バスは1日に2本しか来ない。宿も民宿が1軒あるだけで、あとは年季の入った木造家屋が並んでいる。 村の人たちは親切... -
間違えて送っちゃった
高校時代の友人グループで、今でもよくグループLINEが動いている。 大学に進んだり就職したりして、全員バラバラになったけど、近況報告とかたまに飲み会の予定を立てたりして、ゆるくつながってる。 ある日、グループLINEに一件のメッセージが届いた。 ──... -
隣人はいつも静かだった
大学進学で一人暮らしを始めた頃、築年数の古いアパートに住んでいた。 安い代わりに、隣との壁は薄くて、生活音はよく聞こえた。隣の部屋には、俺と同年代くらいの男が住んでいたらしい。 でも……まったく物音がしなかった。 洗濯機の音も、話し声も、ドア... -
カンカン石
祖母の住んでいた田舎の家には、変わった風習があった。 その家の裏には、小さな祠と丸い石がひとつだけ置かれていて、近所の人たちはそれを「カンカン石」と呼んでいた。 昔からこの村では、「カンカン石に触れてはいけない」という決まりがあった。理由... -
うちの子じゃない
私には小学2年生になる息子がいる。名前は“リク”。やんちゃだけど素直な子だ。 ある日、学校から電話がかかってきた。 「お母さま、リクくんが給食の時間に嘔吐してしまいまして……」 驚いて迎えに行くと、保健室でうつむいているリクがいた。顔色は悪いが... -
このスレ見てる人いますか?
深夜、SNSを見ながらダラダラしていた俺は、たまたま古い掲示板のまとめ記事にたどり着いた。タイトルは《【怖】このスレまだ見てる人いる?》というもので、2016年に立てられたスレらしい。 読み始めると、スレ主が「夜中に窓の外をずっと見てくるやつが...