投稿一覧
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見知らぬ名前の表札
就職して3年目の春、会社の近くに引っ越した。 内見のときから、どこか薄気味悪さを感じてはいたが、家賃の安さと立地に惹かれ、深く考えずに契約した。 引っ越し当日、玄関の表札に気づいた。「佐々木」と書かれていた。 前の住人のものかと思い、不動産... -
引っ越し祝い
会社の異動で、少し田舎の町に引っ越した。 とはいえ、自然が多く、家賃も安くて広い。職場からも近く、環境としては申し分なかった。 引っ越し初日の夜、インターホンが鳴いた。出ると、見知らぬ女性が立っていた。年の頃は40代後半、地味な服装で、どこ... -
隣人のメモ
大学進学を機に、一人暮らしを始めた。 築年数は古いが広めのワンルームで、家賃も格安だった。駅からも徒歩5分。条件は文句なしだったが、ひとつだけ気になることがあった。 隣の部屋の住人が、異様に静かだったのだ。 物音ひとつしない。ドアの開閉音す... -
鏡に映る女の怪談
高校時代の話だ。 部活動の関係で、僕は毎日遅くまで学校に残っていた。ある日、終電近くの時間に校舎のトイレを使った。深夜の学校というだけで不気味なのに、僕が入ったのは“旧校舎”のトイレだった。 そこは、何年も前に取り壊される予定だったが、予算... -
一人暮らし
大学進学を機に、念願の一人暮らしを始めた。古いけど広めのワンルームで、家賃も安い。何より「完全に一人になれる」ことが何よりの魅力だった。 最初のうちは少し寂しさもあったけど、慣れてくるとむしろ快適。誰にも気を使わず、夜中まで動画を観たり、... -
隣人のノート
引っ越してきたのは、3階建てアパートの2階の角部屋だった。家賃も安く、駅からも近い。唯一の不安は、両隣にどんな人が住んでいるかわからないことだった。 右隣の部屋には40代くらいの男性が住んでいるようだった。顔を合わせたのは引っ越し初日の挨拶く... -
廃トンネルの声
大学の夏休み、友人4人と肝試しに行くことになった。目的地は地元でも有名な心霊スポット、「〇〇峠の廃トンネル」。20年以上前に土砂崩れで通行止めになった古いトンネルで、事故や自殺が多発したと言われている。 深夜1時、私たちは懐中電灯を手に、その... -
大丈夫、鍵はかけた
一人暮らしを始めてからというもの、私は戸締まりにはとても気をつけている。特に夜寝る前には、玄関の鍵を二重にチェックするのが習慣だ。 そんなある晩、寝ようとしていた時、スマホにメッセージが届いた。「今日ってさ、鍵ちゃんとかけたよね?」送信者... -
貸した鍵
大学時代、私は知人のツテで見つけた格安アパートに住んでいた。築年数は古かったが、駅も近く、家賃も安い。なにより大家さんがとても親切だった。 「困ったことがあったら、いつでも言ってね」そう言って、合鍵を1本渡された。「何かあったときのため」... -
電話ボックスの女
その電話ボックスは、私の地元のはずれにある公園の横にぽつんと建っていた。今どき誰が使うのかと思うような古いボックスで、周囲の雑草も伸び放題。けれど、なぜか撤去されずに残っていた。 高校の頃、放課後に友人と肝試しをしたことがある。目的地はそ... -
ベランダの男
大学に通うために一人暮らしを始めたアパートは、築年数は古いものの、駅からも近く、家賃も安かった。周囲は静かで、隣人の物音もあまり聞こえない。最初のうちは快適だった。 ところが、ある日から違和感を覚えるようになった。 夜になると、ベランダの... -
やさしい隣人
引っ越してきたアパートは、古くて狭いが家賃が安く、私にはちょうど良かった。隣の部屋には年配の女性が住んでいて、会えば笑顔であいさつしてくれる、感じのいい人だった。 「何かあったらいつでも言ってね。若い人が一人で大変でしょう?」そう言って、...