投稿一覧
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ぬいぐるみ
俺の妹は、小さい頃から同じぬいぐるみを抱いて寝ていた。白くてふわふわの犬のぬいぐるみで、名前を「シロ」とつけて可愛がっていた。 どこに行くにも一緒で、寝るときも食事のときも、常に隣にいた。幼稚園のころから中学に上がるまで、妹にとっては“家... -
シェアハウスの地図
大学を卒業したばかりの春、俺は東京で就職が決まり、都内の格安シェアハウスに住むことになった。築古の一軒家をリノベーションした物件で、全部で5人の住人がいた。 家賃は安く、個室もあり、共有スペースにはキッチンとシャワーがあった。住人同士の交... -
赤い手形の部屋
大学4年の春、就職も決まり、最後の学生生活を楽しむために、友人3人と一緒に旅行に出かけた。行き先は山奥の温泉地。旅館ではなく、安く借りられる古民家風の一軒家に宿泊することにした。 その家は、木造で築年数が相当経っていたが、風情があり、雰囲気... -
鍵のかかった部屋
大学時代、俺はアパートの2階に住んでいた。古い建物だったが家賃が安く、大学からも近かったので即決した。 ある日、バイトから帰ってきて部屋に入ると、何か違和感を覚えた。部屋の空気が重い。匂いも少し違う気がした。 部屋のドアはきちんと施錠されて... -
扉の向こうの男
社会人1年目の夏、俺は安アパートで一人暮らしをしていた。築40年を超える木造のアパートで、2階建ての4世帯。風呂もなく、トイレは共同。 家賃は安いが、天井や床が薄く、隣の生活音が筒抜けだった。 ある晩のこと。深夜2時を回っても眠れず、スマホを眺... -
呼ばれた名前
これは、大学時代に山奥のロッジに泊まりに行ったときの話だ。仲の良い友人4人での小旅行。季節は秋。紅葉が美しい場所で、バーベキューと星空を楽しもうという計画だった。 ロッジは古かったが、雰囲気があり、夜になるとあたりは完全な闇に包まれた。携... -
隣の部屋の住人
大学進学を機に、初めての一人暮らしを始めた。築年数は古いが家賃は格安で、キャンペーン中ということもあり即決した。 隣の部屋も誰か住んでいるらしく、深夜になると時々、物音や小さな咳払いが聞こえてきた。壁は薄いらしく、ドライヤーの音や、テレビ... -
赤いランドセル
当時、俺は地方の新聞社に勤めていた。取材のためにある田舎町を訪れたのは、梅雨の真っ只中だった。 駅から車で20分ほどの小さな集落。目当ては、地元で語られる「迷子神社」という場所に関する地域伝承だった。 神社は山の中腹にひっそりと建っており、... -
耳鳴りの部屋
社会人2年目、引っ越し先を探していたときの話だ。都内で家賃5万円台の1Kという好条件の物件を、不動産サイトで偶然見つけた。立地も駅から徒歩10分以内、築年数もそこまで古くはない。まさに掘り出し物だった。 すぐに内見を申し込むと、不動産会社の担当... -
最後の手紙
僕には幼い頃から仲の良い親友がいた。名前は健太。何をするにも一緒で、学校でも家でも、兄弟のように過ごしていた。 中学に入るとクラスが別になり、次第に話す機会も減っていった。それでも、たまに手紙を交換しては、近況を伝え合っていた。 手紙なん... -
監視アプリ
大学2年の春、彼女と同棲を始めた。1Kの狭い部屋だったが、ふたりで暮らせるだけで楽しくて仕方がなかった。 彼女は少し嫉妬深い性格で、「浮気だけは絶対に許さないからね」とよく言っていた。そんな冗談めかした脅しも、最初のうちは可愛いと思っていた... -
閉じ込められたのは私じゃない
高校時代の話だ。俺の学校では「旧校舎の3階には絶対に入るな」という噂があった。 理由ははっきりしない。ただ、何年も使われていないその一角は、常に鍵がかかっていて、教員すら近づこうとしなかった。当然、生徒たちの間では心霊スポットとして有名で...