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開かずの仏間
私の祖父母の家には、子供の頃から「絶対に開けてはいけない部屋」があった。それは仏間と呼ばれる和室で、仏壇が祀られていたが、私が物心ついた頃には既に鍵がかかっており、家族の誰もその部屋には近づかなかった。 「なんで開けちゃいけないの?」と聞... -
記念写真
大学時代、仲の良い友人5人で旅行に行ったことがある。行き先は山奥にある古びた温泉旅館。ネットのレビューでは賛否両論だったが、「逆にネタになるだろ」とノリで決めた。 旅館に到着したのは午後3時過ぎ。少し傾いた木造の建物、軋む床、くすんだ襖。い... -
お隣さんはいつも静かだった
大学進学を機に、一人暮らしを始めた。新生活に胸を躍らせながらも、少し不安もあった。初めての街、古びたワンルームアパート。家賃は安く、駅からも近い。何より周囲が静かだった。 私の部屋は202号室。隣の201号室には中年の女性が住んでいると、大家さ... -
誰も知らない階段
私の通っていた高校には、妙な噂があった。校舎裏の体育館とプールの間に、誰も使っていない小さな非常階段があるのだが、「絶対に昇ってはいけない」と言われていた。なぜかと言えば、その階段を昇ると、誰もいないはずの場所に人影が見えるからだという... -
お届けものです
平日の昼下がり、在宅勤務中にインターホンが鳴った。画面を見ると、宅配業者らしき男性が立っている。 「お届けものですー」 特に注文した覚えはなかったが、Amazonの注文履歴に覚えのない商品がよくあるので、深く考えずに玄関を開けた。 受け取った荷物... -
見守りカメラ
最近、祖母の様子が少しおかしくなってきた。 ひとり暮らしで足腰も弱ってきたので、母の提案で実家に見守りカメラを設置することになった。玄関、リビング、キッチンに小さなカメラを置き、スマホで映像が確認できる。 最初の数日は何事もなく、祖母も「... -
窓の向こうの教室
大学時代、教育実習で訪れたある田舎の中学校。築50年は経っているという古びた校舎は、どこか空気が重たかった。 担当になったのは2年生のクラス。明るい子が多く、授業も順調に進んでいた。だが、ある日、女生徒の一人から奇妙なことを聞いた。 「先生、... -
おかえりの声
仕事で遅くなったある夜、終電に間に合わず、最寄りの駅からタクシーを使って帰宅した。 家に着いたのは午前1時過ぎ。玄関を開けると、どこか懐かしいような匂いがした。実家のような、落ち着く匂い。 靴を脱ぎ、リビングに入ると、テレビがついていた。そ... -
閉じた窓
学生時代、古いマンションで一人暮らしをしていた。7階建ての5階。エレベーターもないボロい物件だったが、家賃が安かった。 ある日、夜中に窓の外から視線を感じて目が覚めた。 時計を見ると午前2時過ぎ。カーテン越しに何かが動いた気がした。 風かな、... -
夜だけ歩く廃校舎
地元で有名な“出る”と噂の廃校がある。小高い山の上にぽつんと建つ旧中学校で、十数年前に統廃合で閉鎖されて以来、誰も使っていない。 昔は肝試しスポットとして人気だったが、ある年を境に誰も近づかなくなった。 理由は、**“夜だけ校舎の明かりがつく”*... -
忘れ物
高校の頃、毎朝同じ時間に登校していた。通学路には小さな神社があり、通るたびに手を合わせていたのを覚えている。 ある日、珍しく寝坊してしまい、急いで家を飛び出した。普段より20分遅い時間。人気のない通りを駆け抜け、神社の前を通り過ぎたときだっ... -
二階に行ってはいけない
一人暮らしを始めて半年。アパートの隣の部屋には中年の男性が住んでいた。ほとんど顔を合わせることはなかったが、すれ違えば軽く会釈する程度の、普通の関係だった。 ある日、夜遅く帰宅すると、自分の玄関ドアに紙が貼られているのを見つけた。 《あな...