管理人– Author –
-
祖母の押し入れ
私の祖母の家は、築六十年を超える古民家だった。田舎にしては広く、部屋が六つもあり、床の軋む音が常にどこかから聞こえていた。 私は小学生の夏休み、毎年そこに一週間ほど泊まりに行っていた。縁側でスイカを食べたり、近くの川で遊んだりするのが楽し... -
帰ってきた母
僕の母は、去年の冬に亡くなった。原因は交通事故だった。仕事帰りに歩いていたところ、スリップした車に跳ねられたのだ。 突然の別れに家族全員が落ち込んだ。特に僕は母っ子だったから、数ヶ月はずっとふさぎ込んでいた。 そんなある日、部屋の掃除をし... -
隣人のカメラ
私が今のマンションに引っ越してきたのは、春先だった。最上階の角部屋で、日当たりも良く、駅からも近い。完璧な物件だと思っていた。 ただ一つ、少しだけ気になる点があった。 隣の部屋の住人が、いつもこちらを見ていることだった。 引っ越しの挨拶をし... -
赤い人形
私が引っ越したのは、都内から少し離れた古びた団地だった。家賃の安さと、駅からの距離に惹かれて即決したが、最初からどこか妙な雰囲気を感じていた。 入居当日、押し入れの奥に小さな箱が置かれていた。中には、赤い着物を着た日本人形が入っていた。ガ... -
お兄ちゃんの秘密
私は今、兄の部屋を片付けている。兄が事故で亡くなってからもうすぐ一ヶ月になるけど、まだ信じられない。 兄は私にとって優しくて頼れる存在だった。小さい頃からずっと守ってくれて、友達とトラブルがあったときも、夜道で怖い思いをしたときも、必ず助... -
押し入れのメモ帳
大学進学で一人暮らしを始めた俺は、郊外の古いアパートに住んでいた。築年数は相当経っているが、家賃が破格だったためすぐに契約した。 引っ越し当日、部屋を掃除していると、押し入れの奥に古いメモ帳が落ちていた。ボロボロの表紙で、ところどころシミ... -
見知らぬ番号
深夜2時過ぎ、スマホが震えて目が覚めた。画面を見ると「非通知設定」の番号から着信。無視しようとしたが、何度も鳴る。 寝ぼけたまま通話ボタンを押すと、少し間をおいて、小さなノイズ混じりの声が聞こえてきた。 「……みえてるよ……」 ゾッとした。誰か... -
手紙の送り主
ある日、ポストに手紙が届いていた。差出人は不明。消印もない。 宛名は俺のフルネームで、明らかに手書きだった。中を開けてみると、紙にびっしりと文章が書かれていた。 『あなたをずっと見ていました。笑った顔も、泣いた夜も、眠っているときも。あな... -
駅で待っていた男
会社帰り、いつものように夜10時過ぎの電車に乗った。駅のホームはほとんど人がいなくて、電車もがらがらだった。 俺はつり革に掴まりながら、スマホでニュースを見ていた。 ある駅で乗客が1人乗ってきた。スーツ姿の中年男。顔はよく見えなかったが、やけ... -
三階の窓
俺が中学生のころに通っていた学校は、戦後すぐに建てられた古い校舎で、ところどころにヒビが入っていたり、床が軋んだりしていた。 中でも不気味だったのが、旧校舎の三階。普段は使用されていないが、美術準備室だけがそのフロアにあり、授業のたびに誰... -
おじいちゃんの話
祖父が亡くなったのは、俺が小学校6年生の夏だった。その年は特に暑く、蝉の鳴き声がやけにうるさかったのを覚えている。 祖父は昔から無口な人で、よく縁側に座って外を見ていた。俺はそんな祖父が少し怖かったが、たまに話してくれる昔話はどこか不思議... -
鍵が開いていた部屋
大学1年の春、俺は学生寮ではなく、少し離れた安アパートを借りて一人暮らしを始めた。築40年近いボロアパートで、家賃は格安だったが、防音性はほぼ皆無だった。 隣室の目覚ましが聞こえるほどで、最初はうるさく感じていたものの、だんだんと慣れていっ...