平日の昼下がり、在宅勤務中にインターホンが鳴った。
画面を見ると、宅配業者らしき男性が立っている。
「お届けものですー」
特に注文した覚えはなかったが、Amazonの注文履歴に覚えのない商品がよくあるので、深く考えずに玄関を開けた。
受け取った荷物は小ぶりな段ボール箱。
伝票には「お客様のお荷物」としか書かれていなかった。
開けてみると、中には小さな木箱が入っていた。
まるで宝石箱のような造りだが、カギがかかっている。
そして、手紙が添えられていた。
「あの日の約束を果たしにきました。ようやく見つけたよ。ずっと探してた。」
意味がわからず、悪戯かと思ったが、木箱には自分の名前が彫られていた。
それから数日、妙なことが起こり始めた。
・玄関の鍵が勝手に開いている
・寝室のクローゼットが半開きになっている
・家の中に、知らない匂いがする
不安になり、手紙を封筒ごと警察に持っていった。
だが「特に犯罪性はない」と言われ、相談だけで終わった。
念のため、木箱をゴミとして出すことにした。
可燃ごみに出したはずだが、翌日には玄関に戻ってきていた。
仕方なく、ベランダに出て金槌で壊そうとした。
だが、一撃目を入れた瞬間――中から、何かが動く音がした。
ビクッとして手を止めると、カギが自然に外れた。
中には、折りたたまれた1枚の紙と、黒い髪の毛の束。
紙にはこう書かれていた。
「もう逃げられないね。ちゃんと一緒にいるよ。」
怖くなって、実家に避難した。
荷物も置いたまま、スマホと財布だけ持って飛び出した。
しばらくして家に戻ったとき、玄関の扉には何かが貼り付けられていた。
見覚えのある木箱のふた。
そして、ふたの裏側にはこう書かれていた。
「お届け完了しました。」
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