近所のスーパーに買い物に行った帰り道。
道端に落ちていた赤い手袋にふと目がとまった。
片方だけ。子供用だろうか、小さくて、可愛らしい柄だった。
そのとき、すぐ近くに女の子が立っているのに気づいた。6〜7歳くらい。まっすぐこちらを見ていた。
「あの、これ……君の?」
そう声をかけながら手袋を差し出すと、女の子は小さくうなずいた。
「ありがとう」と声がかすかに聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかった。
家に帰ると、何気なくテレビをつけた。ニュースで、小学校低学年の女の子が行方不明になっていると報じていた。
写真が映る。
さっきの女の子だった。
「……え?」
思わず声が漏れた。
ニュースによると、その子は前日から行方が分からなくなっており、近所の空き家の敷地内で見つかったという。すでに死亡していたらしい。
頭が真っ白になった。
そんな馬鹿な。たしかに、たった今、その子に手袋を返したばかりなのに。
混乱したまま、もう一度テレビに目を戻すと、アナウンサーがこう言った。
「発見時、遺体のそばには赤い手袋が片方だけ落ちていたということです」
……なら、僕が拾って渡したあれは?
どうして、その場から消えていたんだ?
それから数日間、なんとなく気味が悪くて、その道を避けて帰るようにしていた。
けれどある夜、ふとした拍子でいつもの道を通ってしまった。
手袋を拾った場所を何気なく見ると、また、赤い手袋が落ちていた。
全く同じ柄。全く同じ位置。
「……君の?」
声が口から勝手に出た。
すると、背後から小さな声が聞こえた。
「うん、ありがとう」
振り返ると、誰もいなかった。
でも、手のひらにはなぜか、手袋がもう一つ握られていた。
それは、右手用だった。
……数日前、拾って渡したのは、左手用だったはずだ。
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