実家の物置を整理していたときのことだ。
埃をかぶった段ボールの中から、古いデジタルカメラが出てきた。僕が中学生のころに買ってもらったものだ。
懐かしくなって電源を入れてみたが、バッテリーが切れていた。充電器も見つかったので、久しぶりに動かしてみることにした。
数分後、カメラが起動した。記録メディアにはまだデータが残っていたようで、再生ボタンを押すと過去の写真が次々と映し出された。
家族旅行、文化祭、友達との日常……懐かしい思い出に見入っていると、違和感のある1枚が目に入った。
見覚えのない部屋。知らない天井。見知らぬ布団。
しかも、誰かが寝ている。
続く何枚かは、その人物を別の角度から撮った写真だった。うつ伏せ、横向き、寝顔のアップ……どれも明らかに盗撮だ。
「気持ち悪……」
思わず声が出た。
誰が撮ったのか? そもそも、いつ、どこで?
当時の僕はそのカメラをほとんど持ち出していない。家族の誰かが使ったにしては、内容が不自然すぎる。
さらに数枚進めると、また奇妙な写真が出てきた。
廊下。知らないマンションのドア。
そして最後の1枚には、玄関ドアが半開きになっていて、中に足だけが写っていた。
気味が悪くなり、データを消そうとしたとき、あることに気づいた。
写真のタイムスタンプが、一週間前だった。
僕は慌てて実家の家族に確認したが、誰もカメラには触れていないという。カメラは数年間、物置に入れっぱなしだったはずだ。
なのに、どうして一週間前に撮影された写真がある?
震える手でカメラを置いた瞬間、背後でカサリと物音がした。
振り返ると、開け放したままの物置の奥。
誰かの手が、棚の隙間からゆっくりと引っ込んでいった。
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