お姉ちゃんの部屋

私は5歳の妹と2人で暮らしている。
両親は数年前に事故で亡くなり、身寄りもいなかったため、私が保護者として妹を育てている。

妹は素直で元気で、特に問題もなく、静かな暮らしをしていた。

ただ、一つだけ気になることがあった。

妹が、毎晩眠る前に言うのだ。

「今日も、お姉ちゃんの部屋で遊んだよ」

私はずっとワンルームで妹と一緒に暮らしていて、“お姉ちゃんの部屋”なんて存在しない

最初は空想の友達のようなものだろうと、あまり気にしていなかった。

でも、ある日妹がこんなことを言った。

「お姉ちゃん、今日怒ってたよ。お姉ちゃんのこと、見えないふりしてるって」

──私は一度も“お姉ちゃん”に会ったことがない。
それでも、妹は明確に何かを感じ、話していた。

ある晩、寝静まった妹の寝言がはっきりと聞こえた。

「うん……うん、大丈夫。私がいるから……殺さないで」

背筋が凍った。

翌日、妹にこっそり「お姉ちゃんってどんな人?」と聞いた。

「うーん……髪が長くて、目がこわくて、夜になるとベッドの下から出てくる」

その夜、私は妹が寝たあと、こっそり部屋の隅々を探した。

そして──妹のタンスの奥から、見たことのないランドセルが出てきた
それはボロボロで、色もくすんでいた。

中には、名前が書かれた名札が入っていた。

「さくら」

それは、私が事故で失った“本当の妹”の名前だった。

今一緒に暮らしている「妹」は──

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