引っ越してから2週間が過ぎた頃、妙なことが続けて起きた。
通販で頼んだ荷物が、「置き配」にしたはずなのに、玄関に届いていないのだ。
最初は配達ミスかと思った。
だが、同じことが3度も続いた。
不審に思って、宅配ボックスも確認したが、どこにも荷物はない。
配送完了の通知は来ている。
だが、荷物がない。
管理会社に相談しても「外部の人間が入った形跡はない」という返答だった。
そこで俺は、簡易のセンサーカメラを設置してみることにした。
玄関の内側に設置できるタイプで、動きを検知して自動で録画が始まる。
数日後、また荷物を注文し、同じように置き配を指定した。
そしてその夜、カメラの映像を確認してみた。
映っていたのは、配達員が荷物を置く様子。
その直後、画面にもう一つの影が映った。
玄関の外から誰かがドアに近づいてきて、荷物を持っていく。
その手つきは慣れていて、音もなくスッと荷物を取ると、左右を確認してそのまま立ち去っていった。
顔は映っていなかったが、明らかに意図的にカメラの死角を読んで動いていた。
鳥肌が立った。
誰かが、俺の家を常に監視している。
その日からカメラを強化し、画角も広げた。
すると、次に映ったのは、信じられない光景だった。
配達が終わって30分後、
ドアの郵便受けから“スマホのレンズ”のようなものが差し込まれている。
カメラはわずかに動きながら、部屋の中を探るように揺れていた。
完全に、俺の部屋の中を覗いていたのだ。
その場で警察に通報した。
映像も証拠として提出したが、「器物損壊や住居侵入ではないので…」という歯切れの悪い返答だった。
数日後、今度はポストに一枚の紙が入っていた。
「カメラ、意味ないよ。もっとちゃんと見張ったほうがいい」
手書きの文字。達筆で、淡々とした文体。
俺はその日のうちに部屋を引き払った。
そして現在、新しい部屋に住んでいるが──
今朝、ポストに同じ文字の紙が入っていた。
「引っ越しても無駄だよ」
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