2025年6月– date –
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おかえりの声
仕事で遅くなったある夜、終電に間に合わず、最寄りの駅からタクシーを使って帰宅した。 家に着いたのは午前1時過ぎ。玄関を開けると、どこか懐かしいような匂いがした。実家のような、落ち着く匂い。 靴を脱ぎ、リビングに入ると、テレビがついていた。そ... -
閉じた窓
学生時代、古いマンションで一人暮らしをしていた。7階建ての5階。エレベーターもないボロい物件だったが、家賃が安かった。 ある日、夜中に窓の外から視線を感じて目が覚めた。 時計を見ると午前2時過ぎ。カーテン越しに何かが動いた気がした。 風かな、... -
夜だけ歩く廃校舎
地元で有名な“出る”と噂の廃校がある。小高い山の上にぽつんと建つ旧中学校で、十数年前に統廃合で閉鎖されて以来、誰も使っていない。 昔は肝試しスポットとして人気だったが、ある年を境に誰も近づかなくなった。 理由は、**“夜だけ校舎の明かりがつく”*... -
忘れ物
高校の頃、毎朝同じ時間に登校していた。通学路には小さな神社があり、通るたびに手を合わせていたのを覚えている。 ある日、珍しく寝坊してしまい、急いで家を飛び出した。普段より20分遅い時間。人気のない通りを駆け抜け、神社の前を通り過ぎたときだっ... -
二階に行ってはいけない
一人暮らしを始めて半年。アパートの隣の部屋には中年の男性が住んでいた。ほとんど顔を合わせることはなかったが、すれ違えば軽く会釈する程度の、普通の関係だった。 ある日、夜遅く帰宅すると、自分の玄関ドアに紙が貼られているのを見つけた。 《あな... -
二階にいるのは誰?
大学時代、下宿していた古い一軒家。家賃が異様に安く、部屋も広かったため即決したが、大家から引っ越しのときに一つだけ注意された。 「夜中、二階には行かないように」 理由を聞いても、「古い家だから、音がするのは気にしないように」と曖昧に濁され... -
落とし物の持ち主
近所のスーパーに買い物に行った帰り道。道端に落ちていた赤い手袋にふと目がとまった。 片方だけ。子供用だろうか、小さくて、可愛らしい柄だった。 そのとき、すぐ近くに女の子が立っているのに気づいた。6〜7歳くらい。まっすぐこちらを見ていた。 「あ... -
訪問者リスト
大学の春休みに、知人の紹介でビル管理会社のアルバイトをすることになった。業務内容は単純で、テナントの入れ替え時に空室を巡回したり、防犯カメラのチェックをしたりするだけだった。 問題のビルは、都内の古い雑居ビル。6階建てで、上の階はほとんど... -
見てはいけない窓
大学2年の夏、友人から格安のアパートを紹介された。ボロいけど駅からも近く、家賃は相場の半額以下。怪しいとは思ったが、金もなかったし、見た目もそれなりだったので契約することにした。 ただ、ひとつだけ気になる点があった。部屋の北側に小さな窓が... -
封筒の中のメモ
引っ越しの荷ほどきをしていたとき、古びた封筒が出てきた。 見覚えのない封筒だったが、差出人欄には自分の名前が書かれていた。筆跡も、自分のものに見える。 中には、小さく折り畳まれた一枚の紙が入っていた。 『絶対にこの部屋に戻ってくるな』 意味... -
いつも見てます
在宅ワークに切り替えてからというもの、部屋にいる時間が格段に増えた。 特に外に出る理由もなく、朝から晩までPCに向かい、たまに食事や風呂で動く程度。人との接点も減り、顔を合わせるのは宅配便の配達員くらいだった。 ある日、ポストに小さな紙が入... -
午前二時のチャイム
僕の住むアパートには、昔から妙な噂があった。 「午前二時にチャイムが鳴ると、誰かがいなくなる」 くだらない都市伝説だと思っていた。けれど実際、過去にこのアパートで失踪した住人が何人かいたらしい。管理人もはっきりとした原因は分からないと濁す...