2025年6月– date –
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赤いランドセル
ある郊外の住宅地での話。私はカメラ好きの男で、休日にはよく近所の公園や街角でスナップ写真を撮っていた。 その日も天気が良かったので、古い商店街の裏路地を歩いていた。細い道の先に、誰もいないはずの空き地が見えた。でもその奥に、小さな女の子が... -
隣人は誰にも見えない
都内で一人暮らしを始めて3ヶ月目。築浅・セキュリティ完備・駅近という条件にしては、家賃が少し安いなとは思ったが、特に気にせず住んでいた。 ある日、エレベーターで同じ階の住人とすれ違った。中年の女性で、どこか無表情でうつろな目をしていた。「... -
その部屋は誰も入れない
大学進学を機に、地方都市の築年数の古いアパートへと引っ越した。家賃が格安で、駅も近く、条件としては申し分なかった。ただ一点、気になる点があった。 それは、部屋番号が「201号室」だったにもかかわらず、建物には「202号室」がなかったことだ。大家... -
閉店後のコンビニ
大学生の頃、夜勤のバイトでコンビニに勤めていた。場所は郊外の住宅街にある小さな店舗。夜間の客は少なく、深夜2時を過ぎればほとんど来ない。 バイト仲間は同い年の斉藤という男で、二人で交代しながら勤務していた。基本はワンオペだけど、深夜の2時か... -
シェアハウスの暗黙のルール
数年前、上京して最初に住んだのは、都内の格安シェアハウスだった。6畳の個室にキッチン・風呂・トイレ共同という、よくあるタイプ。築年数は古かったが家賃が安く、何より駅近だったので即決した。 入居当日、出迎えてくれたのは30代くらいの女性・Aさん... -
開かずの仏間
私の祖父母の家には、子供の頃から「絶対に開けてはいけない部屋」があった。それは仏間と呼ばれる和室で、仏壇が祀られていたが、私が物心ついた頃には既に鍵がかかっており、家族の誰もその部屋には近づかなかった。 「なんで開けちゃいけないの?」と聞... -
記念写真
大学時代、仲の良い友人5人で旅行に行ったことがある。行き先は山奥にある古びた温泉旅館。ネットのレビューでは賛否両論だったが、「逆にネタになるだろ」とノリで決めた。 旅館に到着したのは午後3時過ぎ。少し傾いた木造の建物、軋む床、くすんだ襖。い... -
お隣さんはいつも静かだった
大学進学を機に、一人暮らしを始めた。新生活に胸を躍らせながらも、少し不安もあった。初めての街、古びたワンルームアパート。家賃は安く、駅からも近い。何より周囲が静かだった。 私の部屋は202号室。隣の201号室には中年の女性が住んでいると、大家さ... -
誰も知らない階段
私の通っていた高校には、妙な噂があった。校舎裏の体育館とプールの間に、誰も使っていない小さな非常階段があるのだが、「絶対に昇ってはいけない」と言われていた。なぜかと言えば、その階段を昇ると、誰もいないはずの場所に人影が見えるからだという... -
お届けものです
平日の昼下がり、在宅勤務中にインターホンが鳴った。画面を見ると、宅配業者らしき男性が立っている。 「お届けものですー」 特に注文した覚えはなかったが、Amazonの注文履歴に覚えのない商品がよくあるので、深く考えずに玄関を開けた。 受け取った荷物... -
見守りカメラ
最近、祖母の様子が少しおかしくなってきた。 ひとり暮らしで足腰も弱ってきたので、母の提案で実家に見守りカメラを設置することになった。玄関、リビング、キッチンに小さなカメラを置き、スマホで映像が確認できる。 最初の数日は何事もなく、祖母も「... -
窓の向こうの教室
大学時代、教育実習で訪れたある田舎の中学校。築50年は経っているという古びた校舎は、どこか空気が重たかった。 担当になったのは2年生のクラス。明るい子が多く、授業も順調に進んでいた。だが、ある日、女生徒の一人から奇妙なことを聞いた。 「先生、...