2025年6月– date –
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赤い紐
「それ、何の紐?」 中学の帰り道、クラスメートの理沙が突然聞いてきた。 「え?」 私は気づいていなかったけど、制服の右袖から赤い紐が5センチほど垂れていた。 「どこかに引っかかったのかな」そう言って私は紐を引っ張った。 でも――抜けない。 強く引... -
隣人の記録ノート
一人暮らしを始めて3ヶ月ほど経ったころ、隣の部屋に新しい住人が引っ越してきた。 30代くらいの男性で、どこか人付き合いに不慣れな雰囲気だった。すれ違うたびに軽く会釈はするが、会話は一度もなかった。 ある夜、帰宅して部屋に入ろうとしたとき、ふと... -
最後の一部屋
そのアパートは、地元でも“訳あり物件”として知られていた。家賃は相場の半額以下。築年数は古いが、駅にも近く間取りも悪くない。 俺は引っ越しを急いでいたし、他に空き物件もなかったから、不安を飲み込み契約することにした。 「この部屋だけ、ずっと... -
おかえりの声
高校3年の秋、受験勉強で夜遅くまで塾に通う日々が続いていた。 家に帰ると、玄関のドアを開けながら「ただいま」と声をかけるのが習慣だった。すると、奥のリビングから必ず「おかえり」と母の声が返ってくる。 疲れて帰る日々の中で、その声は何よりも安... -
共用廊下の男
大学生になって初めての一人暮らし。それは自由と引き換えに、少しの不安と寂しさが付きまとうものだった。 私の部屋は、築年数が古いが家賃の安い4階建てのアパートの3階にあった。ワンルームで狭いながらも、十分な広さだった。 ただ、ひとつだけ妙なこ... -
あの部屋のカーテン
大学の近くで一人暮らしを始めたとき、住んでいたアパートの隣の部屋には、ずっと誰も入っていなかった。 古びた外観で、建物全体にうっすらと湿気の匂いが染みついていたが、家賃は破格で、駅にも近い。それなりに満足していた。 だが、ひとつだけ気にな... -
赤いリボンの女の子
僕の家の近くには、小さな神社がある。町外れにぽつんと立っていて、昼間でも少し薄暗く、子どもたちにはあまり人気がない場所だった。 けれど、僕はなぜかそこが好きで、小学校からの帰り道によく立ち寄っていた。 神社の脇には大きな木があって、その根... -
隣人のノック
大学進学を機に、私は小さなワンルームマンションに引っ越した。古びた建物だったが、駅から近く、家賃も安かった。 最初の一ヶ月は特に問題もなく、快適に暮らしていた。 だが、引っ越してからちょうど一ヶ月が経った頃だった。夜、就寝前にふと「コンコ... -
隙間の声
そのアパートに引っ越してきたのは、去年の春だった。 築年数は古かったが、家賃が破格で駅からも近い。多少の古さは目をつぶっても十分な条件だった。 部屋は2階建てアパートの2階、端の角部屋。見取り図を見ると、隣の部屋とは一部の壁でしか接しておら... -
兄ちゃんがくれたもの
僕には二つ年上の兄がいる。小さい頃からずっと仲が良くて、どこに行くにも一緒だった。 ただ、兄ちゃんは少し変わった子だった。外で遊ぶのが苦手で、友達ともあまり話さず、僕とだけよく喋った。それでも僕は、兄ちゃんのことが大好きだった。 ある日、... -
ずっと見ていた
私はずっと一人暮らしをしている。自宅はオートロック付きのマンションで、セキュリティには自信がある。職場も近く、生活の不便もなかった。 ただ、ここ最近、妙な違和感を覚えることが増えてきた。特に夜。帰宅して玄関を開けた瞬間、誰かの気配を感じる... -
見送りの家
山奥の小さな村に、「見送りの家」と呼ばれる古民家がある。正式な住所は残っておらず、地図にも載っていないが、地元の人々の間では有名だった。 「入った者は、見送られるまで出られない」――そう言われていた。 私は都市伝説を追うライターとして、その...