2025年6月– date –
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返ってきたメッセージ
大学時代の友人、ミナとは卒業後もよく連絡を取り合っていた。 お互い忙しい身だったが、週に一度くらいはLINEで他愛のない話をやりとりしていた。 ある日、私はいつものように「元気?」と送った。 すると、すぐに「元気だよ。あんたは?」と返ってき... -
防犯カメラに映っていたのは
私は地方の小さなアパートで一人暮らしをしている社会人だ。仕事はリモート中心のシステム関係。平日はほとんど家にいる。 ある日、管理会社から「最近、住民の荷物が荒らされるという報告があった」との連絡が入った。 私は玄関前に宅配BOXを使うこと... -
隣の部屋の住人
私は大学進学を機に、地方から東京へと引っ越してきた。 築年数は古いが家賃の安いワンルームマンション。都心からは少し離れているが、通学には不便しない場所だった。 引っ越し初日の夜、荷ほどきもそこそこにベッドに入ろうとした時、隣の部屋から「... -
三人暮らし
私は母と弟との三人暮らしだ。 父は私が中学生の頃に事故で亡くなり、それ以来、母が女手ひとつで私たちを育ててくれた。弟は私より4つ年下で、無口だけれど素直で優しい子だ。 母は介護施設で働いていて、朝早く出て夜遅く帰る。そのため、私は学校から帰... -
助けたつもりだった
その日、私はいつもより少し早く会社を出た。まだ陽がある時間帯に帰れるなんて久しぶりだった。 家までは電車で20分、駅からは徒歩15分の住宅街。住宅街に入ったあたりで、小さな公園の前を通ったときのことだ。 「すみません……」 女の子の声がした。 小... -
あの部屋には入らないで
私たち家族がその家に引っ越してきたのは、春の終わりだった。夫の転勤先に近く、築年数の割に妙に安い家賃に惹かれて契約を決めた。 古い一軒家で、六畳三間の和室が続く作り。少しカビ臭かったけれど、掃除すればなんとかなると思った。ただ、二階の一番... -
今日の訪問者
午前10時。私はいつものように在宅ワークをしていた。 この仕事を始めてから、人と会うことはめっきり減ったけど、静かな時間が好きだった。最近は家の中でできることも増えて、食料も日用品も全部ネットで済む。こんな生活、最高じゃないかと思うくらいだ... -
親切なおじさん
大学からの帰り道、夕方の公園で私は見知らぬ中年男性に声をかけられた。 「ちょっといいかな、お嬢さん。道を尋ねたいんだ」 その人は背広姿で、手にスマホを持っていた。40代くらいだろうか。私は警戒しながらも、あからさまに無視するのも気が引けて、... -
鏡の奥にいたのは
私が大学2年の頃、祖母が亡くなった。 法要のため、実家に帰省した私は、祖母が生前暮らしていた部屋に泊まることになった。その部屋は、昔から少しだけ苦手だった。特に、壁に掛けられた大きな鏡が怖くて、子どもの頃は目を合わせられなかった。 けれど大... -
帰ってきた娘
その日、娘が無事に帰ってきた。 行方不明になってから丸2日。家族は警察と一緒に山中を捜索し、奇跡的に保護されたという。 保護されたのは、山奥の登山道近くにある小屋だった。ボランティアの男性がたまたま中にいるのを見つけ、通報してくれたらしい。... -
その通知、あなたに届いていますか?
ある日、スマートフォンに“謎の通知”が届いた。 『あなたの部屋に新しいメモが追加されました』 そんなアプリ、入れた覚えはない。 通知をタップしても何も起こらない。どのアプリが出している通知なのかも不明だった。 「バグかな」と思って放置していた... -
最後の乗客
タクシー運転手をやっていると、不思議なことにたまに遭遇する。この仕事を始めて20年になるが、今でも忘れられない夜がある。 その日は土曜の深夜2時を回ったころだった。 繁華街での客足も落ち着き、車内でラジオを流しながらひと息ついていたとき、バッ...