2025年6月– date –
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隣の部屋の住人
大学進学を機に、初めての一人暮らしを始めた。築年数は古いが家賃は格安で、キャンペーン中ということもあり即決した。 隣の部屋も誰か住んでいるらしく、深夜になると時々、物音や小さな咳払いが聞こえてきた。壁は薄いらしく、ドライヤーの音や、テレビ... -
赤いランドセル
当時、俺は地方の新聞社に勤めていた。取材のためにある田舎町を訪れたのは、梅雨の真っ只中だった。 駅から車で20分ほどの小さな集落。目当ては、地元で語られる「迷子神社」という場所に関する地域伝承だった。 神社は山の中腹にひっそりと建っており、... -
耳鳴りの部屋
社会人2年目、引っ越し先を探していたときの話だ。都内で家賃5万円台の1Kという好条件の物件を、不動産サイトで偶然見つけた。立地も駅から徒歩10分以内、築年数もそこまで古くはない。まさに掘り出し物だった。 すぐに内見を申し込むと、不動産会社の担当... -
最後の手紙
僕には幼い頃から仲の良い親友がいた。名前は健太。何をするにも一緒で、学校でも家でも、兄弟のように過ごしていた。 中学に入るとクラスが別になり、次第に話す機会も減っていった。それでも、たまに手紙を交換しては、近況を伝え合っていた。 手紙なん... -
監視アプリ
大学2年の春、彼女と同棲を始めた。1Kの狭い部屋だったが、ふたりで暮らせるだけで楽しくて仕方がなかった。 彼女は少し嫉妬深い性格で、「浮気だけは絶対に許さないからね」とよく言っていた。そんな冗談めかした脅しも、最初のうちは可愛いと思っていた... -
閉じ込められたのは私じゃない
高校時代の話だ。俺の学校では「旧校舎の3階には絶対に入るな」という噂があった。 理由ははっきりしない。ただ、何年も使われていないその一角は、常に鍵がかかっていて、教員すら近づこうとしなかった。当然、生徒たちの間では心霊スポットとして有名で... -
閉じ込められたのは私じゃない
ある日、友人の由美から「一人暮らしを始めたから遊びに来て」と連絡があった。引っ越したばかりのようで、「まだ何も揃ってないけど、それでも良ければ」と言う。 私はちょうど仕事が休みだったので、その日の午後に訪ねることにした。 由美の新居は、郊... -
住人のいない隣室
都内の小さなアパートに引っ越して半年になる。会社からも近く、家賃も安くて、ひとり暮らしには十分な部屋だった。 だが、ひとつだけ不思議なことがある。隣の部屋から、毎晩「音」がするのだ。 それは決まって深夜1時過ぎ。壁越しに「カタカタ」「ギィィ... -
エレベーターの奥
大学2年の春、俺は古いマンションに引っ越した。都内にしては破格の家賃。駅からも近くて条件はよかったが、築年数は40年以上で、エレベーターも昭和感のある機械式だった。 「安い理由はこれか」と思ったが、当時の俺にはそんなことどうでもよかった。と... -
おかえりの声
高校生の俺は、いつもより遅い時間に塾から帰宅した。家に着いたのは午後10時過ぎ。玄関の鍵を開けて中に入ると、暗がりの中から母の声がした。 「おかえり」 「ただいま」と返し、靴を脱いで部屋に入る。母の姿は見えなかったが、居間のテレビがついてい... -
隣人のメモ
社会人1年目、会社の近くにある築浅のマンションに引っ越した。オートロック、宅配ボックス付き、駅から徒歩5分。文句なしの物件だった。 唯一の気がかりは、隣人の存在だった。一度も顔を見たことがなかったのだ。 毎朝出勤時、ポストの前で会いそうにな... -
閉ざされた階段
高校卒業後、地方の大学に進学した俺は、古びた学生寮に入ることになった。駅から徒歩15分、築50年を超える古い木造の建物で、廊下はギシギシと鳴り、風の強い日には窓が勝手に開いたり閉まったりする。まあ、家賃が安いから文句は言えない。 その寮には“...